臨床心理士とは
臨床心理士は、心の問題にアプローチする専門職です。
臨床とは、「現場」や「実践的な」という意味合いがあり、医療の現場では、クライアント(患者様)に対して直接的な診察や診療を行うことを言います。
大学院レベルの高度な専門知識と臨床経験が認定の条件になり、極めて信頼性の高いカウンセラーと言えます。
精神科のように投薬を使わず、心理学的な方法を使用し心の問題を解決する心理学の専門家です。
公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会から認定を受けた専門職のことを言います。
公認心理師は、国家資格ですが臨床心理士は民間資格に分類されます。
特に、臨床心理学の知識を駆使して、クライアントの心の問題を解決することが仕事です。
代表する臨床心理学技法には、クライアントから長時間にわたり話を聞き出し心理を探る「精神分析」があります。
また、聞き手に徹してクライアントが自分から内心をさらけ出すことを重要視する「クライアント中心療法」は臨床心理士がよく使用します。
クライアントの行動をコントロールし、心ではなく行動を修正し「認知行動療法」で治療します。
児童を相手にするときは、「遊戯療法」を行うことがあります。
遊戯療法とは、遊びを通して児童の心理に向き合う方法です。
絵画・音楽・写真など様々な芸術分野を通して自己表現をする「芸術療法」もあります。
クライアントとその家族を中心にコミュニケーションを分析し問題点を分析し解決する方法を「家族療法」と言います。
臨床心理士の領域は、沢山あります。
教育現場(スクールカウンセラー)、医療現場(クリニックや病院)、産業・労働現場(職業相談所)、司法・警察、大学・研究所、施設相談室、福祉(児童相談所)の領域に分けることができます。
教育現場では、スクールカウンセラーとしての役割があります。
いじめや不登校に関する相談に対しては、心の問題だけではなく、問題の解決策に向けて具体的にアドバイスし担当教師等との連携を図ることがある。
他にも、病院の場合は、主治医の治療に役立てるためにいくつかの心理テストを行い、患者様の性格を分析する。
カウンセリングを行い患者様の相談にのり、心理療法を実施することができる。
児童に対しては、遊びを通して「プレイセラピー」を実施し評価や治療することがある。
また、少年院の受刑者に対してもカウンセリングを通して矯正を手助けするなど場面により様々な役割があります。
臨床心理士になるためには
日本臨床心理士資格協会が実施する資格試験に合格する必要があります。
試験は、誰でも受験できるわけでありません。
指定大学院(第1種、第2種)または専門大学院」を修了しなければなりません。
1種と専門大学院は大学院を修了することで、2種は大学院を修了した後に1年以上の実務経験を積むことで受験資格を得ることができます。
大学院には、心理職経験がない社会人や心理学部以外の出身者もいます。
例外としては、医師免許取得者で2年以上の臨床心理経験を持つ人も臨床心理士試験を受験することができます。
外国で指定大学院と同等以上の教育歴を保持し、修了後日本国内において心理臨床経験を2年以上有することが条件としてあげられる。
医師以外の方が、臨床心理士になるためには、大学院に行くことが必須です。
大学院の入試は、各大学で試験形式が大きく違うので各自の対策が必要です。
大学院に入るための予備校もありますが、受験料が掛かるので経済的な負担も多きいことは事実です。
臨床心理士の資格試験は、一次試験の筆記試験と二次試験の口述面接試験があります。
筆記試験は、マークシート形式と論述形式のどちらもあり、心理学の基礎知識から臨床心理に関わる専門知識まで幅広い範囲で問われます。
口述面接試験では、単に臨床心理に関する知識だけではなく、実際に臨床心理士としての態度や、カウンセリングに必要な人間関係能力も問われます。
臨床心理士試験の合格率は、例年60%前後で、毎年約1000人程度が合格し現場で働いています。
社会人が臨床心理士になるには、学生用の一般入試とは異なり、社会人入試を設けている大学院もあります。
社会人入試は、一般の入試試験よりやや易しい内容になっていることが多いという特徴があります。
理由は、社会人としての経験が入学する際の評価になっている。
社会人入試では、筆記試験と面接試験が行われますが面接の方が重視されています。
主婦でも臨床心理士を目指される方は多い。
臨床心理士には、年齢の受験条件は設けられていません。
近年の傾向は、新卒者よりも様々な経験を積んだ社会人や主婦が求められます。
多くの経験を積んだ臨床心理士の方が、他社の心に寄り添うというスキルは高いからです。
大学院によっては、夜間に通えるコースもあるので社会人や主婦も通いやすくはなってきています。
臨床心理士の年収は
年収は、経験や能力によって異なる。
経験豊富で、仕事の掛け持ちや副業で高い収入を得られます。
職場にもよるが、一般的な臨床心理士の収入は200~500万円程度と言われています。
月給で換算すると29万円、初任給は21万円程度が相場のようです。
アルバイト・パートでの相場は、約1000円~1600円となっています。
臨床心理士の給料を地域別にみてみると、最も平均年収が高い地域で関東の千葉県があげられます。
千葉県が390万円と高い水準になっています。
関西の平均年収347万円と、大阪府では376万円、京都府375万円、兵庫県349万円、奈良県310万円になっています。
日本で一番低い年収は、四国で平均322万円、香川県の296万円です。
臨床心理士の仕事別で給料割合を見てみると、放課後デイサービスでの療育は、年収370万円あります。
その次に年収が高いのは、精神科病院でのカウンセラーで347万円です。
学校のスクールカウンセラーの325万円になっています。
臨床心理士の求人は、放課後デイサービスでの知的障害児や発達障害児の療育で需要が多くなってきています。
働き方としては、常勤ではなく非常勤で働いている人が多いです。
1つの職場だけではなく、生活が苦しくなってしまうため、複数の職場を掛け持ちしている。
大学院修士課程の卒業が必須であり、専門性が極めて高い仕事なのに対して、収入が上がらないのが現状であるようです。
臨床心理士の年収が低いのは、非常勤の割合が多いと言われています。
現在の日本では、まだ心理系の職業の認知度が低くカウンセラーなどを配置して社員のメンタルケアをしようとする企業は少ない。
資格を持っている人が増える一方で、働き口があまり増加していないのが現状です。
臨床心理士を常勤ではなく非常勤として募集している割合が高くなっています。
非常勤は4~5時間での勤務も多く、毎日仕事があるとは限らない。
常勤と比較して低収入である非常勤の割合が高いことから、臨床心理士全体の年収が低くなりがちであるのは事実です。
例えば、年収を1000万円に上げようと思うのであれば独立や開業を目指すことです。
独立して知名度を上げることができれば、セミナーを開き書籍を出版できる可能性が高くなります。
有名な臨床心理士に活動が成功すれば、顧客もつき1000万円に近いお金を稼ぐことができます。
独立や開業には、リスクがあり自分で仕事を得なければならない。
場合によっては収入が減るリスクがある。
海外では、「臨床心理学者」という職業があります。
臨床心理学者の平均年収は850万円前後と高額です。
心理学者と名乗るのに博士号を取得している必要があります。
まとめ
日本の現代社会において、臨床心理士の需要は徐々に増えている傾向にあります。
2021年はコロナの影響で、在宅勤務や外出しにくい不安、外食業界の経営悪化によりストレスを抱え心が病む人々も増えています。
心が傷ついているクライアントが自分なりに立ち上がっていく過程を見守り、適切にサポートを行うことが臨床心理士の仕事です。
カウンセリングは、アドバイスをして導くのではなく、クライアントが自分自身で答えとゴールを見出して進むことをサポートします。
臨床心理士は、まだまだ歴史が浅いですが、少しずつ必要性や居ることのメリットが浸透し需要も増えています。
現在、AI時代と呼ばれ人にとって代わる職種が多いですが臨床心理士のように人と心を通わす仕事は減っていくことはありません。
臨床心理士は、取得自体が難しく、また取得後も鍛錬を義務付けられており非常に信頼性の高い職業になっています。
最近は、テレビメディアにも取り上げられることが多くドラマになり、知名度も高くなっています。
相談室に来てもらう対面で行うスタイルが主流でしたが、ネットの進歩によりカウンセリングもオンラインで行うこともできるようになり働きやすい環境になっています。
また、スカイプを使った対面カウンセリング、メールやチャットを使うことができる。
ネットを使うやりとりは、コロナの時代に対面でないことで感染リスクを減らすこともでき、遠隔カウンセリングができるので需要が減ることがない。
臨床心理士は、全体数が非常に少なく、希少な存在です。
どこに就職しても重宝してもらえるのはメリットと言えます。
非常勤の掛け持ちとなることが多いのはデメリットになりますが、日替わりで職場が変われば気分転換にもなります。
またひとつの職場にいないので、職場の中の複雑な人間関係に巻き込まれることも少なくなります。
非常勤で期限がある雇用が多く、経験や年を重ねて就職活動をする場合があります。
実際に、臨床心理士の職場は、病院、学校、企業、刑務所など幅が広く、今後も仕事がなくなることがありません。
非常勤も多く、類似した資格があり、中々待遇がよくならないのも一因になっています。
色々な職場で経験を積み実績を重ねることで個人の待遇もよくなり、将来的に臨床心理士の需要も増えていきます。