「相談員(社会福祉士)」の仕事内容を皆さんはご存知でしょうか?
「相談員(社会福祉士)」という職業について、テレビや雑誌・ビジネスシーンなどで見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか。
「相談員(社会福祉士)」の仕事内容や仕事のやりがい・つらいこと・向いてる人の特徴・なりかたなどを知っていないと転職活動ができません。
今回は、現役で「相談員(社会福祉士)」として活躍されている方に、インタビューのうえ、実体験を踏まえて根掘り葉掘り聞いてみましたので、これから目指そうと考えている方の参考になることでしょう。
相談員(社会福祉士)の仕事内容と給料
仕事内容
相談者の悩みを傾聴し、解決に導くという性質上、カウンセラーのお仕事と、似ていると見られる事が多い職業です。
相談技術を磨くという点では、たしかに共通する部分もあります。
しかし、大きな違いとしては、心の癒しではなく、社会保証制度の専門知識を駆使し、現実に生じている問題の解決を、図る点です。
また相談者と1対1のみならず、本人を取り巻く、家族や知人、あるいは地域の人々へ、働きかけるケースもあります。
例えば、高齢者の生活相談においては、介護や病気に関するお悩みが、もっとも多いです。
そうした際には通常、介護保険制度のご利用を、提案します。
しかし、ご本人のプライドや状況により、利用を望まれない場合や、制度に馴染まないケースも、少なくありません。
また、相談は当人でなく、家族からといった場合もあります。
実際にあった例として「父がまったく外出せず、身体が衰えて心配。デイサービスに行かせて欲しい。」といったご相談がありました。しかし本人は「行きたくない」と、拒否されています。
そうした際、ご本人の想いを、無理に変えることは、決して出来ません。
しかし、お話するうち、たまたま囲碁を愛好されているという、趣味が分かりました。
地元で囲碁サークルがあったことを思い出し、ご案内すると「囲碁サークルなら。」と興味を、示されました。
見学や紹介を経て、参加が決定。
結果、地元で囲碁仲間もでき、孤独の解消になりました。
また外出をきっかけに、心身ともに健やかになり、次に様子を伺った際には、ずっと笑顔も増えていました。
このように専門知識はベースにしつつ、地域社会の様々なネットワークに、アンテナを張ることや、情報収集も大切になります。
なお、ご相談の内容は「介護が必要にならないように、予防したい」といった、長期的なものから「もう生活が成り立たない/虐待されている」といった、緊急度が高いものまで、様々です。
また、日本の人口的に高齢者の相談支援が、最も多いのですが、社会福祉士の支援対象は、およそ福祉と名の付く、すべてに渡ります。
例として、以下のような支援分野も、担います。
- 入院/退院支援(メディカル・ソーシャルワーカーと呼ばれ、病院に常駐します。転院先の相談、退院後の暮らしの相談、医師との仲介など、多岐に渡ります。)
- 障害者支援(心身の障害で、生活が困難となった方を、支援します。障害者施設への勤務、ヘルパーの派遣、仕事や経済支援など、様々です。)
- 成年後見人(病気や認知症などで、ご本人の財産管理が困難になった際、資産を代わりに管理します。)
- ケースワーカー(主に役所など公的機関で、生活保護を担当します。ケガや病気、家庭の事情や障害、勤務先の倒産などで、当面の生活資金が無く、困窮する方を支援します。)
- 児童支援(児童福祉施設や、公的機関に勤務します。DVから避難した親子や、親のいない子供達などが、支援対象です。)
- 更生保護(おもに、刑務所を出所する方が対象です。仕事やお金のあてがない場合、再犯に手を染めず、社会復帰できるよう支援します。)
- スクールソーシャルワーカー(いじめ、暴力、虐待、家庭や生活の問題など、様々な事情により、学校に行くのが難しい生徒や、家族を支援します。)
※他にも状況に応じ、多様な支援があります。
給料・収入
年収は476万円(※正職員の場合)
相談員(社会福祉士)の仕事のやりがい
一定のセオリーや、約束事は存在するものの、人の数だけ、考えも想いも、様々です。
それだけに、決まったマニュアルはないと言って良く、つねに試行錯誤となります。
自身の行動や発言により、相談者の人生が変わるケースさえあり、仕事に退屈を感じることは、1日もありません。
また相談職(社会福祉士)は、たった1人では何も出来ない、仕事です。
職場の同僚はもちろん、他の福祉機関や、病院、警察、役所、民生委員など、すべてと連携する可能性があります。
地域のネットワークとしては、公私の区別もなく、自治会も、趣味サークルも、お世話好きのおばさんも、すべてが結びつき、協力し合う関係とみなして行きます。
そのため、相談職として経験を積むほど、顔なじみになる人や組織が、広がって行きます。
色々な人から直接『ありがとう』と、感謝を言われる機会が多いのも、この仕事ならではです。
仕事という枠を超え、地域の一員として、役に立っている充実感を、肌身に感じられます。
また、自身の行動を切っ掛けとして、町全体が変わる事さえあり、どれほど経験を重ねようと、やり甲斐の尽きないお仕事です。
相談員(社会福祉士)の仕事で辛いこと
ある程度の慣れはありますが、相談においては、つねに全力で思考を重ねるので、気疲れは避けられません。
また、ご本人が混乱され、状況が整理できていない状況から、お話がスタートすることも、あります。
あるいは本音では「だれかの助けなんか、借りたくない」と思いつつ、仕方なく訪れる方も、いらっしゃいます。
そうした中、ご本人の想いを尊重しつつ、状況を整理しつつ、必要な支援を行うのは、神経を使います。
肉体労働とはちがう種類の、疲れを感じると言えます。
また、どのように支援するのか、決まった正解が無いだけに、相談員同士で、意見が食い違うことも、あります。
基本的に相談職の人は、使命感が強く、真面目な性格の場合が多いのです。
いま出来る限り介入をした方がいいのか、見守る時期かなど、どちらも善意で、理がある場合の食い違いなどでは、意見の調整がに苦心することもあります。
いずれにしても、人同士の距離が極めて近い職業のため、様々な気遣いは、どうしても避けられません。
また、集中して話していると、時間はあっという間に、過ぎて行きます。
時間が限られる中、他の相談との兼ね合いを考えた調整も、難しい一つです。
相談員(社会福祉士)へ向いている人の特徴3つ
- 深い意味で『人間が好き』な方
- 仕事とプライベートのメリハリがつく方
- プロ意識を持てる方
①深い意味で『人間が好き』な方
相談員(社会福祉士)は、かなり特殊なお仕事です。
日々、人間のあらゆる個性と、向き合う連続となります。
望み、悩み、性格、生い立ち、住まい、お仕事、1つとして同じものはありません。
どのような分野の相談であれ、予想をはるかに超える展開や、出来事も、たくさん起こります。
いったい、相手は何を望んでいるのか?どうして、このような発言をするのか?こればかりは、机上で学べるものではなく、現場の経験を通し、掴んで行くしかありません。
決まった正解はなく、つねに試行錯誤であり、それをハードルと感じてばかりでは、追い詰まってしまいます。
深い意味で『人間が好き』であり、その探求を面白いと思える人の方が、続けられる職業だと感じます。
何年も勤めれば、何冊も小説が書けそうな程、様々な出来事と接します。
そうして続けた先には、相談の技術や知識のみならず、相談員自身が人間として、広く大きく、成長させて頂ける職業です。
②仕事とプライベートのメリハリがつく方
非常に濃密な仕事であるだけに、相談した内容は、自身の心にも強く刻まれます。
退勤後、お風呂に入っている時など「あの方、今頃どうしているだろう・・。」などど、ついつい考えて、しまいがちです。
それらを、まったくゼロにするのは難しいですが、とくに深刻な状況の支援は、考え続けてしまうと、相談員の心自体が、疲弊してしまいます。
この仕事は、一歩進んで、戻るといった展開も多いです。
人の心や人生は、とても複雑であり、いちどは心を開いてもらえたのに、また閉ざされてしまう事もあります。
懸命に説得した事も、心変わりして、とつぜん断られてしまう場合も、あります。
ときに悔しい想いもしますが、少しずつ一進一退する事が多いのが、相談支援です。
プライベートにおいては、スパッと切り替え、楽しむときは楽しみ、自身のコンディションを保つ事こそ、良い仕事を成すために、とても大切です。
③プロ意識を持てる方
法律や制度に精通しているのが、相談員(社会福祉士)とは言え、悩みに対し、制度の利用を促すだけであれば、ただの手続き仲介人となってしまいます。
人間だれしも、追いつめられたり、悩みがあれば、自分の感情や状況を、うまく整理できない事も多く、相談者の発言の奥底にある悩みを見据えてこそ、本当のプロです。
例えば以前、1人暮らしの、高齢者の女性より、相談の電話が寄せられました。『わたしは火事が、心配です。2階に寝ていて、燃えたら逃げ場がないのです。とても心配で、どうしたら良いでしょうか。』といった内容でした。
その表面だけを汲みとれば『役所の防災課が、個人宅の消防点検を、やっています。
そちらに申し込まれますか?』といった案内で、終了となります。
しかし、この相談者が怖がっているのは、本当に火事なのでしょうか。
なにか違う不安が、引き金になっている可能性を感じ、まずは私自身が、訪問させて頂きました。
お宅を拝見し、ご本人とお話するうち、いちど心筋梗塞で倒れ、再発する恐怖を抱かれている事が、わかりました。
また知人や家族が、近くにおらず、孤独も感じていらっしゃいました。
年配の方が「寂しいです、こわいです」と、ダイレクトに言えないのは、当然です。
お話するうち、絵や書道の趣味を、お持ちだったので、地域の市民サークルをご案内したところ、入会され、孤独の解消につながりました。
また、足腰の衰えもあったことから、介護保険を申請し、ホームヘルパーを、利用する運びとなりました。
ヘルパーの定期訪問により、家事の支援とともに、見守りとなり、独居の不安が和らぎました。
いずれも最初の相談で、消防の案内で終わっていては、たどり着けませんでした。
このように、つねにプロ意識を忘れず、本当の想いや、解決策を探る支援が、とても大切です。
相談員(社会福祉士)へ向いていない人の特徴3つ
- 収入が一番の目的
- 固定観念が強い
- 人を頼るのがニガテ
①収入が一番の目的
どのような仕事でも、善意だけでは成り立たず、収入アップを考えるのは、重要な事です。そうは言っても、相談職に関しては、お仕事自体が好きな方でなければ、長くは続きにくいと思われます。
相談員(社会福祉士)の給料は、職場によってかなり差がありますが、しっかりとした事業所で、正職員として働き続ければ、生涯暮らしていける収入は、得ることが可能です。
しかし、日本全体の平均年収と比較した場合、高い方とは言えません。
また業界の性質から、公的な性格が強く、急成長するといった分野ではないため、給料の大幅アップを望むのは、難しいと言えます。
ただ、社会福祉士となれば、独立して、事務所を開設することが可能です。
あるいは、経験を活かして起業するといった場合は、お金持ちになることも、不可能ではありません。
しかし稼ぎたい想いがメインである場合は、他にもっと効率よい業界はありますので、そちらを目指す事を、おススメします。
②固定観念が強い
相談支援の仕事は、常識を覆されることの連続です。
人の想いも行動も、予想がつかない事ばかりであり「常識的に考えて、○○です。」「○○さんは、こういう人だ。」といった具合に、周囲の話やイメージで、判断してはいけないケースは、山ほどあります。
一見、関係ないと思われる情報が、真実に迫るヒントである事も多く、広く柔軟な考えを持つことが、重要です。
以前、ホームレスの支援を行っていた社会福祉士が、河川敷のテント住居に、赴きました。
福祉の制度には、無料で住居を提供し、就職の斡旋を行うものがあります。
制度の利用を提案して回りましたが、誰も相手にしませんでした。
その相談員は「家が無いより、あった方が良いのに。
職が無いより、あった方が良いのに、何故?」と、最初は不思議で、たまりませんでした。
しかし熱意をもって、何度も河川敷に足を運び、ようやく1人を説得しました。
ただ、住居のアパートに行けば、どこにも仲間はいません。
1人で孤独な生活となり、職場も馴染めず、ストレスでお酒をあおってばかりの、日々になりました。
そして最終的には、ホームレス生活へ、戻ってしまいました。
その方にとっては、家と収入さえ手に入れば、最善ではありませんでした。
コミュニティに入って行ける支援や、職場に馴染む支援が、必要であったかも知れません。
人の幸福は、1つの尺度では、測れません。
一般常識に捕らわれず、つねに広く、柔軟な考えをもつことは、相談支援の職業に不可欠です。
③人を頼るのがニガテ
誰かに頼られる仕事ではありながら、自身もまた、人に相談できる事が大切です。
どれほど相談技術を上げても、なんでも1人で解決しようとすれば、いつか必ず、行き詰まります。
悩んだ時には、職場の同僚や先輩へ相談し、皆で共有することが大切です。
さまざまな角度からの意見から、最善の方法が見つかるケースも、多いです。
また、自身のメンタルにとっても健全であり、成長に繋がります。
相談職に就いたあとには、職場を超えた横同士のつながりに、参加しておく事も有益です。
どの地域においても、しばしば相談職同士の交流会や、勉強会が開かれています。
困難な相談ケースにおいて、どのように対応するのか、大勢で考えていく中で、新たな視点が生まれて行きます。
また相談者の問題解決には、地域コミュニティの力が、必要不可欠です。
地域の関係者に、何かしらのお願い事や、相談をしなければならない場面も多く、自身も人に頼れることが、大切です。
相談員(社会福祉士)になるには?
相談職の資格は、事業所によっては、必須ではありません。
しかし、社会福祉に関連する業務においては『社会福祉士』の資格保持を、求められるケースが多いです。
相談支援の専門家として、横文字で『ソーシャルワーカー』と呼ばれます。
さまざまな事情により、人生や、暮らしが困難となっている方の相談に乗り、問題解決へ、お手伝いするのが役目です。
また、本人のみならず、ともに暮らす周囲の人々も含め、望む生活へたどり着けるよう、働きかけも行います。
『社会福祉士』となるためには、年に1回行われる国家試験に、合格する必要があります。
合格率は、平均30%前後です。
また、誰でも受験できるわけではなく、定められた12通りの条件のうち、いずれかを満たしている必要があります。(※所定の学校でカリキュラム修了/相談員の実務経験など)福祉系の学校を出ていない方には、まず受験資格を得るまでに、少々ハードルがあると言えます。
そのため、まずは福祉職に就き、実務経験を積みながら、受験要件の達成を目指す方も、多いです。
また社会福祉士より一歩、ハードルの低い『社会福祉主事』を取得し、経験を積みつつ、社会福祉士を視野に入れるルートもあります。
さいごに
昨今、生活の困窮や、心の悩みは増えており、相談職(社会福祉士)は、ニーズが増え続けている職業です。
この先、いくら優れた制度や、政策が作られたとしても、本当に余裕のない方には、届きません。
困難な立場に寄り添える人や、深い意味で『人間が好き』という方に、ぜひ目指して頂きたいです。
また新卒だけでなく、まったく違う業界からの転職者も、多いのが特徴です。
それは、自身の人生経験が、活きる仕事だからです。
相談者は、何かしらの辛さ、困難、絶望感を抱いていることも、少なくありません。
会社員には、会社員の、病気の方には、病気の方にしか分からない、困難があります。
その心に寄り添い、共に考えようとするとき、すべての人生経験が、活きてきます。
もし、ご興味のある方は、社会福祉士の仕事を描いた書籍や、マンガも発売されています。
現場の雰囲気が、リアルに描かれている作品も多いので、よければ是非いちど、触れてみて下さい。