介護・福祉

ソーシャルワーカーに相談できることとは?【社会福祉士が解説】

ソーシャルワーカーに相談できること
  • 職業の選択として視野に入れたいけれど、どんな仕事か想像できない。
  • 相談職と言うけれど、具体的に何を話すのかな?

ソーシャルワーカーを目指す考えや、興味をお持ちの方は、まず上記のような疑問を、抱くのではないでしょうか?

なお、この記事を書く私ですが、2013年に社会福祉士を取得し、7年間の勤務経験があります。

すべて実体験に基づいていますので、専門のソーシャルワーカーについて、鮮明にお伝えできると思います。

ぜひ最後まで読んで頂けたら、幸いです。

ソーシャルワーカーは何でも相談屋

ソーシャルワーカーとは何か。

一言で表すと『なんでも相談屋』です。

たとえば私の職場では、高齢者の生活相談を行っていますが、趣味さがしから、虐待などの深刻な相談まで、あらゆるお話を、受けています。

窓口は『地域包括支援センター』という、難しい正式名称なのですが、一般の方には何をする所か、分かりにくいと思います。

そのため、地域によって『おとしより相談〇〇』『みまもりスポット〇〇』といった風に、かみくだいた名前にしている場合も、多いです。

メディカルソーシャルワーカーの相談例

『何でも相談できる』は、担当する分野ごとに、ほぼ全てに共通します。

病院に配属されるメディカルソーシャルワーカー(通称:MSW)は、患者のお悩み全般に対し、相談に乗ります。

たとえば患者や家族は、医師から病状を説明された時、ショックや混乱で、頭がまっ白になってしまう時も有ります。

しかし『もういちど、説明して貰えませんか?』とは、頼みにくいものです。

MSWは病院の所属ですので、カルテの内容も共有しています。

そのため、落ち着いたタイミングで、お話することも可能です。

また治療の方針について、医師には直接、主張しにくい事もあります。

そうした場合にも、仲介・伝達役になる等、あらゆる内容について、相談に応じます。

入院中だけでなく、その前後も合わせ、広い視点で患者に寄り添う存在が、MSWです。

成年後見人(せいねんこうけんにん)の相談例

さいきん、高齢者が詐欺に狙われるニュースを、よく耳にすると思います。

とくに1人暮らしであったり、認知症で判断力の衰えた方は、格好のターゲットとなってしまいます。

たとえ合法であっても、訪問販売のカモになる事も、少なくありません。

私が以前に伺ったお宅では、お1人で7件もの新聞を契約し、部屋が新聞で、埋め尽くされていました。

また必要ないリフォームや、布団を買わされるなど、高額な契約を結ばされるケースもあります。

そうした場合、ご本人に成年後見人が付いていれば、法的に契約を撤回できます。

判断力が衰えた方の、財産管理を担うのが役目であり、専門職としては、弁護士・司法書士・社会福祉士が担当します。

認知症で、自身のお金が下ろせないなど、福祉や暮らしへの関連が強い案件においては、社会福祉士が担うケースが多いです。

お金の管理は暮らしの根幹であり、ご本人の生活全般も把握しつつ、必要なサポートを行います。

ケースワーカーの相談例

収入が無い、あるいは限定されるといった理由で、経済的に困窮する方に対し、相談に乗ります。

年金が無い/年金では暮らせない、倒産や解雇を受けた、病気やケガで働けない・・など、あらゆる状況が、相談の対象となります。

生活保護制度を適用し、経済的なサポートが中心となりますが、その後も支援は継続します。

暮らしの悩みや、もし復帰が可能であれば、その為にどうするかを、定期的に訪問して相談します。

経済的なお困りごとは、身体の衰えや、傷病といった背景も多く、しばしば高齢福祉や、メディカルソーシャルワーカーと連携します。

どうして何でも相談を受け付けるのか?

どのような方でも、お困りごとには、様々な要因が絡んでいます。

とくに本人だけでなく、周辺環境や家族が、関わっているケースも多いです。

私も高齢者支援が担当ですが、介護の問題より先に、お金が底をついていたり、ご家族に障害をお持ちの方がいるなど、専門以外の分野で、支援が必要となる時があります。

介護のサポートだけを行っても、ともに暮らすご家族が困窮していたり、お金が無いのでは、暮らして行けません。

また相談者が訴えること以外に、解決の糸口や、問題点が存在するケースも、少なくありません。

もともと福祉事業は、高齢/障害/児童など、縦割りです。

しかし実際の社会は、全員が関わり合っており、切り離せるものではありません。

相談者が望む生活へ、ともに歩むのがソーシャルワーカーであり、専門外の問題にも着目し、あらゆるお困りごとに、耳を傾けて行きます。

どの職業よりも信頼が第一

ソーシャルワーカーは相談者の、あらゆるプライベートを知り得ます。

家族や知人との関係、資産、趣味や性格など、まさに個人情報の極みです。

そのため、どの職業にも増して、秘密厳守は絶対となります。

たとえ、ご本人の親族から『どんな事を話しましたか?』といった問い合わせがあっても、ご本人の承諾無しには、絶対に開示しません。

どのような相談も受ける以上『この人であれば、何でも話せる』という信頼が、必要不可欠となります。

町を駆けるソーシャルワーカー

相談と言うとカウンターに座り、来訪者を待つイメージが、あるかも知れません。

もちろん、それも1つの形ではあります。

しかし現場を見てこそ、本当に分かる情報は、とても多いです。

そのためソーシャルワーカーは、あちこちを飛び回る、お仕事と言えます。

私の場合も、相談は職場の窓口よりも、外部に訪問するケースの方が、圧倒的に多いです。

自宅を訪問して分かること

介護のお困り事は、まず話だけでも概要は掴めますが、自宅を拝見して分かる事も、多いです。

たとえば、ご本人は訴えていなくても、階段に手すりが無ければ、転落のリスクが考えられます。

お風呂場のタイルが滑りやすかったり、浴槽が深いのが分かると、入浴の大変さが想像できます。

これらは見なければ、分からない事であり、可能な限り自宅を、訪問させて頂いています。

また、知人や家族が訪れたりと、生活を支える人がいるかも、大切な情報です。

独居で繋がりが無ければ、より大きな生活サポートが、必要となるケースも多いです。

病院を訪問して分かる事

病院から退院した後、自宅での生活支援を行う場合、出来る限り事前に、病院を訪問させて頂きます。

傷病は治療されても、病院はその後の生活までは、サポートすることが出来ません。

とくに日々の暮らしでは、お買い物や料理は出来そうか、トイレや入浴は可能かなどは、暮らしの根幹に関わります。

そのため、リハビリなどの様子を見て、退院後の生活を想定します。

ひと口に「患者さんは歩ける」といった情報が有っても、スタスタ歩けるのか、杖が必要なのか、手すりを伝ってやっとなのかで、まるで違うと言えます。

本当に困難なことは、退院してからでは遅く、サポートの体制を、整えておきます。

そして生活に困難があれば、ホームヘルパーの派遣や、住宅のバリアフリー化、福祉用具の用意などを、検討して行きます。

地域を訪れて分かる事

自宅や家族の情報だけでなく、地域の特性も大きく左右します。

生活必需品を得るスーパーが遠ければ、買い物だけでも大変です。

坂道や階段が多い町では、外出の大変さも違います。

また認知症の方などは、家族や近隣の人々に、理解が有るかも重要です。

いかに福祉サービスと言っても、24時間ご本人には、付き添えません。

そのため、周囲がサポートしてくれる雰囲気なのか、その状況によっても、必要な支援は異なります。

世の中に求められる、ソーシャルワーカー

現在、日本は超高齢社会です。

所得格差の広がりや、地域ネットワークの薄まりなど、日々の暮らしに困る方は、少なくありません。

ソーシャルワーカーは、これからの世の中に、大きく求められています。

生活の苦難は複雑であり、1つを解決すれば良いのではなく、広い視点で状況を理解する存在が、不可欠です。

そして、どれほど制度や施設を整えても、本当に余裕のない人ほど、支援の手が届きにくいものです。

そのため、すべてを橋渡しできる役割が、大きく必要とされています。

「ソーシャルワーカーに相談できること」まとめ

ここまで、お伝えしてきた様に、ソーシャルワーカーは生活のお困りごとを、何でも相談できる存在です。

もちろん1つの福祉、1つのサービスだけで、解決できない事は多く、地域すべてと連携して行きます。

つうじょう世の中のお仕事は、同業者と言えば商売敵であったり、ライバルとなる事が多いです。

しかしソーシャルワーカーに関しては、分野や職種も超え、本当の意味で全員が、協力関係にあると言えます。

経験を積むほど繋がりは増え、つねに地域の皆で、力を合わせている実感が湧きます。

また、相談のプロとして、つねに『どうしたら心を開いてもらえるか?』『相談者の本音は何か?』といった試行錯誤を、重ねて行きます。

退屈を感じるときは1日もなく、やり甲斐や探求は、尽きません。

そして自身も、人間として深く、成長できる職業です。

今回、この記事を通じて、ソーシャルワーカーの役目を、お伝えできていたら幸いです。

また、これから目指す方が、1人でも増えて頂けたら、とても嬉しく思います。

ABOUT ME
原田 ゆきひろ
■歴史・文化ライター、取材ライター、社会福祉士。 ■東京都在住。高齢者の生活相談や、福祉の町づくりに携わる。 ■本業の傍らライター活動を行う。何ごとも自らとびこみ、表現する文章をモットーとしている。
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