テレビを見ていると、芸能・政治問わず記者会見に沢山の新聞記者がいて、取材している状況が目に入ると思います。
また、新聞を読んでみると、大勢の新聞記者が執筆者として名前を連ねており、自分もそういったお仕事がしたいと憧れている方も多いのではないでしょうか?
今回は、現役で業界紙の新聞記者として勤めている方に、向いてる人の特徴や、なるには何をすれば良いのか、仕事内容などインタビューしましたので、これから目指そうと考えている方の参考になることでしょう。
新聞記者の仕事内容と給料
仕事内容
記事の企画立案、取材アポイント、取材(対面やオンライン、電話など)、記事作成、取材先との原稿のやり取りなどを一貫して一人で行います。
媒体によってはリリースのリライトをしたり、記者自らが取材先に広告提案を行うケースもあります。
取材は一日に1~3件程度、取材以外にも記者発表会や新製品の体験会などに足を運ぶこともあります。
取材のアポイントは、日中で取材の入っていないタイミングや取材の間の移動中にとるイメージです。取材から帰社して夕方からは記事の作成作業を行います。
1週間でおよそ4~8本程度の記事を執筆し、媒体によっては取材先担当者への掲載前の原稿確認をお願いします。
取材先から修正・加筆された原稿が戻ってきたら、組み版端末と呼ばれる紙面作成の編集端末に記事や画像を入稿します。
入稿は締切前日~締切日がメーンとなり、この期間は夜遅くまで残ることも少なくありません。
入稿締切日には記事の内容について表現の誤りや誤字脱字がないか確認する校正作業を行い、新聞記事の最終チェックに入ります。
大手新聞社であればデスクやカメラマン、校正作業班、取材記者、広告営業がそれぞれ別の人員で配置されるケースが多いですが、規模の小さい業界紙の場合、一人ですべて行うことも少なくありません。
年収・給料
業界紙の新聞社だと年収300~400万円程度です。
新聞媒体によっては広告営業を記者が兼ねることもあり、その場合は獲得した広告インセンティブが別途支給(広告料金の3~7%程度)となります。
新聞記者の仕事のやりがい
業界紙だからこそ、ある分野に特化した知識が得られることは一つのやりがいだと感じています。
ある分野に詳しくなると、それに関連した資格の取得にも意欲的になり、自分磨きにもつながります。
また取材には会社の代表クラスの方が応じてくださるケースが多いのですが、取材を通して多くの方々と接する中でその方々の生き方・理念、生まれ育ってきた背景にまで踏み込める点も面白いところです。
ほかの仕事をしていてもなかなか出会うことのできない人々と話す中で新たな情報を得ることができます。
何より、文章を書くことが好きな人、人々にあまり知られていない状況を世の中に発信したいという信念のある方にとっては大きなやりがいを得ることができると感じます。
また、良い記事を書くと取材先の方にお礼の言葉を頂くことも少なくないので、こういった取材先からの反応もモチベーションにつながる理由の一つです。
記者が少なく日々仕事に追われはしますが、やりがいは大きいと感じます。
新聞記者の仕事で辛いこと
給与や休暇など、待遇面で大手新聞社ほど大きな期待はできません。
ボーナスなし、残業代も固定時間分のみ支給しているような会社がいまだにあります。
そして残業も多く、私が経験した会社では月50~60時間の残業が常態化しています。
もちろんこれはケースバイケースで、毎日定時で上がれる会社やボーナスがしっかり毎年支給される会社もあります。
仕事面でつらいことは常に納期に追われることです。
例えば週刊発行の場合、毎週の締切日までに取材、取材記事の作成、取材先への原稿確認、入稿、校正をすべて終わらせなくてはなりません。
このうち一つでも滞ると、紙面の完成に必要以上に時間がかかるだけでなく、直前で記事の差し替えとなり印刷所や別の取材先など多方向に影響が出てきます。
記者が少ない会社だと複数のページを一人で担当することも少なくないうえ、取材の企画も毎週各自で考えなければなりません。
この「時間に迫られている感」は仕事中常に付きまといます。
新聞記者へ向いている人の特徴3つ
- 根気強い人
- 人と話すことが好きな人
- アンテナが高い人
①根気強い人
根気強い人が向いている理由は、自分でどのように仕事を進めるか考えなければならないためです。
業界新聞は初心者歓迎の会社が多いという話を先程しました。
一方で、初心者を育てる社内の教育体制が整っていないことも少なくないのです。
例えば、入社して最初の1週間はほかの記者について回り、次の週からは自分だけで仕事をするように言われる、ということがあるのです。
ここで困る点はいくつかありますが、まず取材アポイントを取れないことです。
業界のイロハもわからない状態で取材のアポをとれ、と言われても、先方からの質問(なんの取材か、なぜ当社に声をかけたのか、など)に応えられません。
そのため取材前にある程度の予備知識として何が必要か、自分で考え調べていく必要があります。
次に、実際の取材でも「何を聞けば良いかわからない」という状況に陥ります。
これも事前に会社の下調べをすることと、取材先の会社に関連する予備知識を学んでおく必要があります。
記事を書いて発表するといったわかりやすい仕事よりも、こういった地道な仕事のほうが負担が大きくなりがちなので、根気強く続けられる能力が必要です。
②人と話すことが好きな人
人と話すことが好きな人が向いてる理由は、コミュニケーションが仕事の大部分だからです。
新聞記者といえば取材だけして黙々と記事を書く、というイメージを持たれる方が多いかもしれません。
しかし実際には、人と人とのコミュニケーションが最も大切で、原稿の執筆は新聞記者の仕事の中でもごくごく一部です。
そのほかの時間は取材や取材先の方々への対応がメーンとなります。
特に業界紙では、一度取材をした方々と長くお付き合いをしていくことが珍しくないため、取材ではただ質問をするだけでなくたわいのない話や他社の情報を持っていくなどして信頼関係を築いていくことが大切です。
人と話すことが好きな人であれば、信頼関係を築くことに抵抗はないでしょうし、時には雑談の中で思わぬ情報を聞き出すことができたりするかもしれません。
締め切りに迫られる毎日の中で、「この人なら取材に必ず応じてくれる」という人を作っておくのは、小さい業界紙では重要なことと言えます。
③アンテナが高い人
アンテナの高い人が向いている理由は、質の高い記事を書くことができるためです。
取材のアポイントを取る前に、まず「どこの会社のアポイントを取るか」、「どんな特集企画を掲載しようか」を考える必要があります。
例えば、編集長から指定された会社のアポイントをこちらでとる、ということもあります。
しかし紙面の企画はそれぞれの記者が1ページずつ割り当てられている中で、自分で企画を考えることがほとんどです。
その際に「どんな企画をやろうか」と悩んでいるようでは締め切りに間に合いません。
そのため、常に世の中の状況に敏感なアンテナの高い人が向いているのです。
アンテナの感度が高いことで、リリースの中から特に注目が集まりそうな情報を選び出したり、取材先でふとした話の中から課題となる事柄を感じ取ることができます。
そして業界の課題に即した質の高い記事を作成することができます。
これは業界紙のみならず新聞業界全般で言えることだと思いますが、常に企業の動向や経済・政治などを追っていることが大切です。
新聞記者へ向いていない人の特徴3つ
- コミュニケーションが苦手な人
- マイペースに仕事を進めたい人
- 文章を書くことに抵抗がある人
①コミュニケーションが苦手な人
先程は人と話すことが好きな人が新聞記者に向いているという話をしましたが、人と話すことやコミュニケーションが苦手な人は向いていないとも言えます。
理由はやはり人と接する機会が多いためです。
取取材から記事の入稿まで複数回にわたり取材先とやり取りをしますが、先方からの要望で掲載前のゲラを見せてほしいと言われることもあります。
取材先によって要望は違いますが、コミュニケーションが不足しているとトラブルにもつながりかねます。
メディアという仕事上誤った情報はご法度ですので、こまめに連絡を取る必要があります。
勿論記者同士のコミュニケーションも必須です。
記者はそれぞれ別の仕事をしている場合が多いですが、だからこそ定期的にミーティングを行います。
各自の進捗報告や予定している特集企画、仕事の進め方や今後の方針について話し合う機会が設けられているのです。
ほかの記者とのコミュニケーションがうまくできないと、企画のすり合わせなどがうまくいかずに苦労するでしょう。
②マイペースに仕事を進めたい人
マイペースな人が向かない理由は、締め切りが常に付きまとう仕事のためです。
記者は各人で取材や記事作成を続けますが、皆念頭には締切日のことがあります。
締め切り日から逆算して間に合うように取材、原稿作成、原稿確認作業を進める中で、マイペースな仕事は危険といえます。
原稿確認は取材先の方にお願いをしますが、原稿の確認に時間が必要だと言われることも少なくありません。
この原稿確認期間を鑑みて、紙面の企画をしてから早めに取材を終わらせて、記事を書いて、といった見通しを立てた仕事をする必要があります。
締め切り日に原稿が間に合わないと、ほかの記者の記事に差し替えとなるケースもあり、ほかの記者に負担がかかります。
時間に追われるという性質上、自分の裁量で仕事をしたい人や、時間にこだわらず仕事をしたいという人にはあまり向いていないと言えます。
③文章を書くことに抵抗がある人
文章を書くことに抵抗がある人が向いていない理由は、記事の作成が原稿の締め切りに間に合わない可能性があるためです。
「文章能力」の有無は、業界新聞の記者になるにあたって実はそれほど重要ではないと考えています。
文章は嫌でも仕事をしているうちに書くようになります。
勿論記者の取材力や文章力によって記事の質が左右されることはありますが、実は新聞記事の文章にはある程度決まった「型」があり、数をこなしていくうちにその型に当てはめた新聞記事の文章を書けるようになります。
しかし「文章を書くことに抵抗がある」場合、記事の執筆がなかなか進みません。
取材を終えて原稿作成に必要な情報はそろっていたとしても、文章を書くことに抵抗がある人はなかなか筆が進まず、結果的に締切日に間に合いません。
「そんな人いないのでは」と思うかもしれませんが、初心者歓迎で採用している業界紙にはたまに見られます。
新聞記者へ就職する方法
大手転職サイトなら複数社の業界紙の募集がコンスタントにかかっています。
必要な資格は特にないケースがほとんどで、初心者歓迎の新聞社も多いです。
今やニュースといえばネットが主流で、新聞の紙媒体の発行部数はどこの会社も右肩下がりです。
ですが、紙の媒体ならではの趣や安心感、細やかさなどがあると思います。
正直、どの会社も苦境は続くかと思いますが、新しい風を吹かせ、メディア業界で貢献できる人を目指してほしいです。