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作家になりたいやつが多すぎる問題。目指したい人はどうしたらいい?

作家になりたいやつが多すぎる

「将来は小説家を目指したいけれど、望みはあるかな」
「やっぱり競争率が高すぎて、厳しい世界だろうか」

いわゆる“物書き”に憧れる方に、最初に立ちはだかるのが、この現実です。高望みはせず、現実を直視してあきらめた方が良いのか。それとも夢は追い続けるべきなのか。今回は、ライターをさせて頂いている立場から、そうした方へお伝えして行きます。

なお作家とひと口に言っても、劇作家や絵本作家など様々な分野があります。ここでは一般的に多くの人がイメージする“小説家”にフォーカスして、お話します。

作家になりたいやつが多すぎる?

まず志望する人のうち、何人くらいがプロになれるのでしょうか。一般的には「小説家になりたいです。」と口にする人のうち

実際に書き始める人が、1000人に1人。その中から・・
最後まで完成させる人が、1000人に1人。その中から・・
何らかの企画で受賞して認知されるのが、1000人に1人。その中から・・
最終的にプロとしてやって行ける人が、100人に1人。

このような世界だと言われています。やはり現実として数字で見ても、わずかな一握りと言うことが出来ます。

年齢を重ねても目指すことは出来る

上記で厳しい現実をお話しましたが、しかしデビューすることや、世の中に受け入れられるため、あまり年齢は左右しないというメリットもあります。

すこし前に私は音声会話SNS「clubhouse」を通じ、作家の川口俊和さんから、直にお話を聴く機会がありました。川口先生は40才を過ぎて小説家デビュー。初作品『コーヒーが冷めないうちに』は、売り上げ28万部を突破しました。

有村架純を主演に映画化もされ、小説は様々な言語に翻訳され、日本を超えて反響を呼ぶほどになりました。

ご自身が「この作品は人生経験が凝縮してある」とおっしゃっていましたが、これはすべての小説作品に言えることです。若ければ良いというわけではなく、むしろ様々な人生経験があるからこそ、表現できる事があります。

たしかに若手で賞を取り、話題になる人もいますが、それもほんのひと握り。著者が何才かを、読む決め手にする人は殆どいません。人生経験の積み重ねは大きな糧となり、むしろ小説を書く際のアドバンテージになります。

本当になりたいですか?

ここまでプロになれるのは、ひと握りであるという現実。しかし年齢には関係なく、むしろ人生経験があるからこそ、内容に深みが出るというメリットの、両方をお伝えしてきました。

その上で小説家を目指すのに、いちばん必要なことは何か。それは「本当に書きたい想い」「書き続けられる継続力」この2つが最重要かと思います。

とくに最初の書きたい気持ちというのは、心の奥底からという意味でして、実はこれが曲者なのです。

小説家の魂

アニメ等でメジャーかつ大御所の声優「大塚明夫」氏の著作に「声優魂」という本があります。

分野こそ違いますが、この本に書かれている真理は共通する内容で、小説家を目指す方も、ぜひ読んで頂きたい1冊です。

具体的にはいったい、どういうことなのでしょうか。以下、その一部を抜粋してご紹介します。

〇〇になりたいやつはバカである?

この本は目次をめくったあと、いきなり1ページまるごとを使い「声優になりたい奴はバカである」と、大きな文字で書かれています。

しかし、これだけでは「逆説的なエールなのかな」とも思えます。ところが読み進めると、冒頭から本気で“声優志望者”を、突き落とす言葉のラッシュ。

もしプロになっても、社会的信用がなくてローンが組めない現実。そもそも競争率からして無理ゲー。有望な新人が現れれば、すぐ取って代わられる世界・・などなど、まるで容赦がありません。

こうした現実は、売れなければ食べていけない職業として、小説家にも共通します。

本当はチヤホヤされたい?

声優のタマゴの多くは、表向きは「みんなに夢を与えたい」「演じるのが大好きです」と言いつつ、ほんとうの動機は「みんなにチヤホヤされたい」「有名人になって稼ぎたい」といった想いが隠されていると、大塚さんは見抜いています。

たとえば新人に「演劇を体験すると表現力が上がるよ」と、アドバイスすると「人前に出るのは恥ずかしいです」と返されるエピソードがあり、声優もお芝居なのに、それがイヤなら演じるお仕事をやりたい想いは、本気ではない。そのように感じる事が多いそうです。

誰しも、お金持ちや有名人になりたいと思うことは自然であり、それ自体は悪い事ではないです。しかし、それを目指すために声優は、あまりに非効率な道であり、もっと良い方法が他にある。このように断言されています。

小説家も同様で、あなたは本当に書くことが好きで、たまらないですか。それとも・・ここのボタンを掛け違えてしまうと、きっと人生を大きく遠回りします。

ほんとうに書きたくてたまらない?

第一線の声優として残っているのは、不遇であろうが、周りから止められようが、もう演じたくて仕方のない「芝居バカ」ばかりだと、大塚氏は言います。

そして厳しい言葉ですが「雇用され会社に面倒を見て貰う。そんなフツウの社会では生きて行けないヤツの職業だ」とも。

これは音楽家や役者や絵描きといった、アーティスト系のお仕事すべてに言える事でしょう。鳴かず飛ばずで報酬が無い、周りに反対される、有名になったものの再び世間に見放された・・例えそんな状況でも、やり続けられるか。

小説家であれば、それでも書くことを止めない。放っておいても、たまらず書き続けてしまう。それが真の意味での「書きたい」であり、いつか突き抜けて行く人なのだと思います。

発表の手段は多種多様

時代の流れとして、ひとつ朗報なのはインターネット全盛期になったという事です。
ひと昔前は出版社を通じて、世の中に認知してもらうしかなく、これは知名度やツテが無ければ、かなりのハードルです。

もちろん現在も出版社の影響力は絶大ですが、自身のWEBサイトを作って発表することも出来、電子書籍の作成はハードルが低いです。またSNSの拡散力は強力で、ここからフォロワーに作品を拡散してもらう道もあります。

また、私がclubhouseでトークしたように、本来であればコンタクトを取ることさえ困難な、メジャーな人と触れ合える手段もあります。

このように世の中に作品を知ってもらう方法が、限りなく豊富になったことは、とても大きなチャンスと言うことが出来ます。

あるいは、まだまだこの先に新たなコンテンツが誕生する可能性もあり、いまや作家やアーティストも、世の中で主流のツールには、つねにアンテナを張っておく方が良いでしょう。

いつか小説家デビューをするために

小説家は本当に素晴らしい職業です。私も心揺さぶられた、大好きな作品がたくさんあります。

しかし結論から言いますと現実は厳しく、いきなりそれ一本を目指すのは、あまりに無謀な賭けと言えます。

なかには天性の才能と運を兼ね備え、とつぜん有名になる人もいるでしょう。しかし、それは本当にごくごく、わずかな例であると言えます。そのうえ、世の中の流行も人々の好みも、無情なほどすぐ移ろいます。

従って、まずは安定した何かしらの収入基盤を築きつつ、その傍らで書き続けて行くスタイルが良いでしょう。私も副業でライターをさせて頂いていますが、いまの世の中は、ありとあらゆるライティングのニーズがあり、同じ文章のお仕事として、ライターもおススメの1つです。

ここまで厳しいこともお伝えしましたが、それでも書き続けたいと思った時、きっとあなたの想いは本物です。おなじ「物書き」として応援したいと共に、いつか素敵な作品を世に出した時には、ぜひ私も読んでみたいです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

ABOUT ME
原田 ゆきひろ
■歴史・文化ライター、取材ライター、社会福祉士。 ■東京都在住。高齢者の生活相談や、福祉の町づくりに携わる。 ■本業の傍らライター活動を行う。何ごとも自らとびこみ、表現する文章をモットーとしている。
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