発達障害に関する研究や世間に知られていったことで、子供だけでなく大人のADHDが注目されてきています。
社会人になって「ミスが多い」「いつも注意されてばかりいる」というお悩みから、医療機関を受診する方も多くなっているようです。
ADHDの人に向いている仕事や職場の雰囲気、反対に避けたほうがいい職業を紹介していきます。
ADHDの特徴とは
まず、ADHD(注意欠陥・多動性障害)は発達障害の1つで、「不注意」「多動性」「衝動性」が特徴として挙げられます。
仕事や日常生活において、以下のようなことに当てはまる場合は、もしかしたらADHDの傾向があるかもしれません。
- 動いていないと落ち着かず、座ってじっとしていることができない
- 集中力がないため話が追えず、話を聞いていないように見られてしまう
- 単調な仕事や計算が苦痛である
- 約束を忘れたり、時間に遅れたり、締め切りに間に合わなかったりすることが多い
- やるべきことをやりきれず、投げ出してしまう
- 些細なことで苛立ってしまい、爆発的に怒ってしまうことがある
- 忘れ物や亡くし物が多い
- 他人の会話を遮って一方的に喋りだしてしまう
- 音に敏感ですぐに注意がそれてしまう
- 仕事でケアレスミスが多い
当てはまるものはありましたか?もちろん傾向なので正確な診断は病院で行ってもらう必要がありますが、思い当たる部分がある場合は、受診のきっかけにしていただくのもいいのではないでしょうか。
いずれの傾向も怠惰ややる気がないということが原因ではありません。脳の機能発達が偏ったことから起こるものであるため、過度に自分を責めてしまう必要はありません。
症状タイプ別の見極め方
ADHDのタイプは「不注意優勢型」(不注意が目立つ)と「多動・衝動性優勢型」(落ち着きのなさが目立つ)と「複合型」(不注意、多動性、衝動性ともに目立つ)の3つに大きく分類されます。
不注意優勢型
このタイプは、不注意が原因となる症状が主に現れます。以下に挙げたような症状はどんな方にでも起こりえますが、ADHDの方は年齢不相応に起こり、日常生活や社会生活に支障をきたす可能性が大きいです。
- ケアレスミスが多く、同じミスを繰り返す
- 集中力がなく、気が散りやすい
- 大事なものを忘れる、なくすことが多い
- 締切や約束を忘れてしまう、守れない
- 作業を順序立てて行うことが苦手である
- タスクを整理できない
- デスク周りやバッグの中を片付けることが苦手である
多動・衝動性優勢型
このタイプは、多動性や衝動性が原因となる症状が主に現れます。
じっと座っていられないようなイメージがありますが、大人のADHDの方は、なんとなくそわそわしていたり、体を小刻みに揺らしたりという症状が目立ちます。
- じっとしていられない
- 喋りすぎることや失言が多い
- 貧乏ゆすりや目的のない動きが多い
- そわそわしている
- 衝動買いが多い
- すぐにイライラする
複合型
このタイプは、上記に挙げた不注意・多動性・衝動性がすべて同じくらい目立つタイプを指します。
多動・衝動性優勢型は子供の頃から症状が目立ち問題視されることが多く、保護者により適切な治療や対応が行われている場合もあります。
しかし、不注意優勢型は「ちょっとうっかりした子供」というような理由で見逃されがちです。
また、学校の授業のようにずっと座っているような機会も大人になるにつれて少なくなっていくことから、多動・衝動性の症状は目立ちにくくなっていきます。そのため、社会人としてのスキルを求められたときに、タスク管理やミスのない業務遂行という点において、不注意の症状が顕在化するのです。
向いている働き方
では、ADHDの人に向いている働き方はどのようなものでしょうか。自分に向いている仕事を見極めるにはまず、自分がどのタイプかを把握することです。
集中力に自信がなくミスが多くなってしまうのか。それとも、じっとしていることが難しいのか。もしくは、どちらもなのか。
具体的な職業は次項でご紹介しますが、一般的にADHDの方は自由度の高い働き方が合っていると考えられています。例えば裁量労働制、フレックス制、フリーランスというような働き方です。また、内勤よりも外勤がメインになる職業や、出張が多い業種も向いているでしょう。
会社や職場によって雰囲気はもちろん異なりますが、発想力や独創性を活かせる業種や、行動力を活かせる自由度の高い職業を探すとうまくいく可能性が高いです。
向いている職業リスト10選
ここからは、ADHDの方に向いている具体的な職業を10個ご紹介いたします。ADHDの強み、弱みは共通点もある一方で、人によって異なります。以下にご紹介するものは「この職業でなければ向いていない」ということではないため、職場の環境や業務内容、ご自身の性格も検討して見つけてみてくださいね。
クリエイティブ系
- デザイナー
- アニメーター
- イラストレーター
こちらの職業は、発想力や独創性が活かせるため、特に不注意優勢型の傾向が強い方に向いています。仕事中にアイディアや考えがどんどん浮かび、それが不注意の原因になっている方には、そのアイディアが活かせる職業をおすすめします。
アクティブ系
- 営業職
- ジャーナリスト
- カメラマン
- 起業家
これらの職業は、一定の場所に留まっていることが少ないため、多動・衝動性優勢型の傾向が強い方に向いています。ただし、頭の中で組み立てる必要がある職業のため、並行して作業を進めるのが苦手な方は「作業のリスト化」や「マニュアル作成」、「段取りを考える時間を作る」という工夫をしてみてください。
専門職・職人系
- プログラマー
- エンジニア
- 研究者
上記の職業は、いずれも専門性が高く、興味のある分野に高い集中力を発揮できる方におすすめです。ADHDの方は、自身の関心がある分野と職業の専門性が一致した場合、高いパフォーマンスを発揮できる可能性があります。
もちろん専門性が高い仕事であれば、上述の3つでなくても問題有りません。音楽家や画家など、芸術方面に関心があるのであればそちらを目指すのもいいでしょう。
反対に向かない職業
これまではADHDの特徴から、向いている職業を紹介してきました。では、反対に活躍しづらい仕事はどんなものがあるでしょうか。
一般的にではありますが、ADHDの方はスケジュールやタスク管理が必要となる仕事や事務仕事は向いていないと言われています。代表的な職種は以下の3つです。
経理
経理業務は日々の反復作業が多く、またミスに厳しい仕事です。また、内勤であり行動力を活かしづらい仕事です。
総務
業務が多岐にわたる総務は、マルチタスクのため自分で段取りやタスクを整理して仕事を進めていく必要があり、作業効率が大幅に落ちてしまう可能性があります。
秘書
細やかな気配りやスケジュール調整が必要となる秘書業務は、向いていないとされることが多いです。しかし、行動力が活かせる仕事でもあるので、職場の雰囲気によっては合っていることもあるかもしれません。
まとめ
ADHDの特徴とそこから考えられる、向いている職業についてご紹介してきました。頑張っているのにケアレスミスが多いなどの上手くいかないことは、自分が悪いのでも会社が悪いのでもなく、ただ単純に向いていないのかもしれません。
病院に行って障害だと診断されることも、受け入れにくいことかもしれません。それでも、もし仕事や職場が合っていないと感じているのなら、自分を責めてしまう前に、向いている仕事や適切な治療法を見つけてみてくださいね。そして、自分だけで抱え込まず、必要であれば医療機関のサポートを積極的に利用しましょう。