前から気にはなっていたけど、人と話すとき、悲しくもないのに何故か涙がでる…という人はいませんか?それは意外とあなただけではないかもしれません。
そんな気になる症状の原因と対処法についてみていきます。
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人と話すと涙が出る場面とは?
「人と話すと涙が出る」という人は、具体的にどのような場面でそのような症状が出ているのでしょうか。
「涙が出る」として、多くの人があげている場面をいくつかみていきます。
①自分の意見や気持ちを伝えるとき
自分の思っている意見や気持ちを、相手に思い切って伝えようとするときに、涙が出ることがあるようです。
ですが、本人の感覚では、悲しいという感情は無いことが多いようです。
②自分の本音を打ち明けるとき
ずっと言えなかった自分の本音などを打ち明けるときにも、涙が出ることが多いようです。
この場合も、本人の感覚では、悲しいという感情は無いことが多いようです。
③感情的になって話すとき
何かにとても怒ったときなど、感情的になって話をするときに、涙が出るようです。
どんな感情でも、とても強い感情を伴っている、ということが共通して言えます。
④自分の話を優しく聞いてくれたとき
他愛もない話をしていたとしても、相手が自分の話に心から共感してくれたり、自分のことを認めてくれたとき、涙が出るようです。
また、特にそういったことを言ったり、そういった素振りを見せていないのに、「大丈夫?」と優しく声をかけてくれたときにも、涙が出ることがあるようです。
⑤目上の人と話をするとき
会社の上司や先生など、自分より目上の人と話をするとき、涙が出ることがあるようです。
この時も、「怖い」などの感情があるわけではなく、意図せず涙が出てしまうようです。
人と話すと涙が出る原因
では、人と話すと涙が出てしまう原因とは、一体何なのでしょうか。
それには大きく2つの原因が考えられます。
①心が弱っている
プライベートや仕事など、生活の中で、何か心が傷つくような出来事があり、心が弱っているときです。
心がとても敏感になっているため、普段はなんでもないような些細な言葉でも、とても心に突き刺さってしまうことがあります。
②HSPである
「HSP(エイチ・エス・ピー)」とは、アメリカの心理学者である、「エレイン・N・アーロン」博士が1996年に提唱した性格的な特性を言います。
HSPは、まだあまり知られていませんが、この気質に当てはまる人の中に、人と話をすると涙が出る、という症状のある人が一定数いるようです。
これは、様々な情報にとても過敏であり、それゆえ、自分の気持を抑え込んでしまうため、その気持ちを吐き出そうとするときに、抑えていた気持ちが涙となって溢れてくるという症状です。
HSPってどんな人?
HSPとは、「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の略です。
そして、HSPの4つの特徴は、それぞれの頭文字をとって、「DOES(ダス)」と呼ばれています。
では、その4つの特徴を1つずつみていきましょう。
【D】何事も深く考えてしまう
「Depth of processing」の頭文字です。
些細なことも、さらに掘り下げて、色々なことに考えをめぐらせてしまいます。
そのため、相手がどのような気持ちでその言葉を言っているのかも読み取れたりします。
また、基本的に、何か行動を起こすときにも、色々と考えてから行動するので、行動を起こすまでに時間がかかってしまいます。
このように、その時が楽しければいいという浅い考えよりも、人生全体を考えたような深い考えを好みます。
【O】刺激に過敏である
「Overstimulated」の頭文字です。
小さな刺激にもとても敏感なので、大きな音や強い光などには、とてもストレスを感じてしまいます。
また、人間関係にもとても気を遣っていて、言葉の1つ1つに様々な考えをめぐらせ、とても疲れます。
人混みや大人数も苦手で、些細なことにも過敏に反応したり、傷つきます。
【E】感情の波が大きく、他人のことも自分の事のように感じてしまう
「Emotional reactivity and high Empathy」の頭文字です。
特に、他人の感情に対して共感することが多く、他人の感じていることを、あたかも自分の事のように感じてしまいます。
そのため、映画やドラマを見たときにも、自分の事のように嬉しくなったり、悲しくなったりします。
また、他人を観察する力に長けているため、細かな言動などから、本心を見抜いていたりします。
【S】些細なことも気になってしまう
「Sensitivity to subtleties」の頭文字です。
普通であれば気にならないような機械の動く小さな音や、タバコの臭いなどが、とても気になってしまいます。
また、衣服のタグや素材の肌触りなどにも、とても敏感で、カフェインや添加物にも過敏に反応したりします。
さらに、理屈では説明しがたい、「勘」のような第六感もよく当たったります。
HSPになる原因
HSPになる原因は、生まれ育った環境などの後天的なものではなく、生まれながらにもった先天的なものだと言われています。
また、障害とは違い、生まれもった気質だとも言われていて、現在、全人口の15〜20%である5人に1人の割合で、このHSPに当てはまると言われています。
この結果から、HSPに当てはまる人は、程度の大小はあれど、かなりの確率でいるということになります。
そして、HSPの人は、自分にとっての危険を判断する脳の扁桃体という部分の働きが生まれつき強く、恐怖や不安を感じる神経回路が敏感に働く傾向にあります。
HSPセルフチェック
以下は、HSPのセルフチェックになります。
自分がHSPかどうか気になる方は、是非チェックしてみてください。
自分がHSPかどうかを判断するために簡単なチェックリストを日本版HSP尺度を用いて作成しました。
日本版HSP尺度ではいくつ当てはまればHSPというような診断に用いるのではなく、当てはまる項目のものが自分自身のHSP気質となります。
ですので、自分にはどんなHSP気質があるのかという点で参考にしてみてください。
1 大きな音や雑然とした光景などの強い刺激が不快
2 忙しい日々が続くと暗い部屋やベッドなどプライバシーが守られる場所に逃げたくなる
3 人の気分に左右されやすい
4 短時間にやらなければならないことが多いと気が動転する
5 生活や環境の変化に混乱する
6 子どもの頃「内気」「敏感」と親や先生から言われたことがある
7 音楽や美術といった芸術に深く感動する
8 繊細な香りや味、音や音楽が好き
9 一度にたくさんのことを頼まれるとイライラする
10 びくっとしやすい
11 最近睡眠不足もしくは睡眠過多である
12 一日中憂鬱な気分が続く
13 もともと興味のあったことに興味が持てなくなってきた
14 自殺を考えたことがある特に1~11までに当てはまるものがある方はHSPの可能性が高く、12~14のものだけが当てはまった場合にはうつ病の可能性があります。
両方とも当てはまった場合には、HSPによってうつ病になっている可能性も考えられるため医療機関へ相談されることをおすすめします。
(出典:CLINIC FOR)
人と話すと涙が出る症状と上手く付き合っていくには
ここまで説明してきたように、HSPは後天的なものではなく、先天的な気質のため、その気質を変えるというのは非常に困難です。
また、HSPはマイナス面ばかりではなく、非常に気が利いたり、他人の気持ちをよく理解し行動できる、という長所にもなります。
ですので、その気質を変えるのではなく、上手く付き合っていくということが大切になります。
また、「人と話すと涙が出る」という症状が、HSPを原因としない場合にも有効な対処法をいくつかご紹介します。
①何も考えない、何もしない時間をつくる
HSPの場合、様々な環境や他人の言動にとても敏感で、それに対するストレスも感じやすいです。
また、常に様々なことに対して考えをめぐらせていますので、こういった、何も考えず何もしない時間をつくることで、脳に休息を与えることができ、リラックスすることができると言えます。
②一人の時間をつくるようにする
HSPの場合、人間関係についても、常に様々な考えをめぐらせ、対応しています。
さらに、他人の感情に対して共感しやすく、感情の波が大きくなりやすいです。
心が弱っている場合にも、他人の言動には影響を受けやすいので、人間関係のストレスを減らすためにも、定期的に一人の時間をつくるようにすると、心がリセットされるでしょう。
③ポジティブな物事や人と関わるようにする
他人の感情に影響を受けやすいHSPは、ネガティブな物事や人と関わることで、同じような感情になってしまいます。
逆を言えば、ポジティブな物事や人からは、ポジティブな影響を受けますから、できるだけポジティブな環境でいることが大切です。
これはHSPに限ったことではなく、心が弱っているときにも、ポジティブな声掛けをしてもらうことで、前向きな気持ちになれることもあるでしょう。
④自宅のインテリアやルームウェアなどは、リラックスできるものを選ぶようにする
HSPは、衣服などの素材にもとても敏感です。
そのため、ルームウェアなどは肌触りの良いものを選び、自宅のインテリアも自分好みのリラックスできる空間にすることで、日々のストレスを癒やすことができます。
また、HSPは、常に様々なことに考えをめぐらせ、脳をフル回転している状態ですので、疲れがたまりやすく、睡眠時間の長い人が多いと言われています。
HSPに限らず、睡眠や睡眠の質はとても大切ですので、自宅はリラックスできる空間にしておきたいですね。
⑸専門の医療機関に相談する
人と話すと涙が出る症状や、その他の症状から生きづらさを感じている場合には、一度、専門の医療機関に相談することも大切です。
HSPという気質から、不安障害や適応障害、うつ病といった病気を患っている可能性もありますし、薬を服用することによって、悩んでいる症状が軽減されることもあります。
主に、心療内科や精神科の受診となり、受診をためらわれる方も多いかもしれません。
ですが、こういった病院では、これまで歩んできた人生や、なぜ生きづらさを感じているのかなどを、とても親身になって聞いてもらえますし、それだけで気持ちが少し楽になるかもしれません。
ですので、受診をためらう気持ちはとてもよく分かりますが、自分ではどうにもならなくなった時には、専門の医療機関に助けを求めてみてくださいね。
まとめ
人と話すと涙が出るという症状は、意外と多くの人が経験しています。
ですが、そういった症状は、周りの人に驚かれてしまったり、自分の意志ではない場合には、とてもモヤモヤしてしまうでしょう。
しかし、こういった症状は、自分の中にため込んだ気持ちが、涙となって溢れていることがほとんどです。
そして、「泣く」という行為には、リラックス効果があり、決して悪いことではありません。
ため込みすぎた気持ちを、体が本能的に涙という形で開放し、心の安定を図っているのです。
そして、自分の気持ちを抑え込むことなく、少しずつ吐き出せるようになったとき、意図せずに涙が出る回数も減っていくのではないでしょうか。