生産管理という仕事を聞いた事がありますでしょうか?
その名の通り「生産」を「管理」する仕事という事になりますが、具体的にはどのような仕事のことを言うのでしょうか?
日本のモノづくりを支える製造業において、生産管理という職種はとても重要なポジションになります。
ここでは生産管理の仕事内容や求められるスキル、どのような人が向いているのか等について解説して行きたいと思います。
生産管理の仕事内容
まず、製造業とは「仕入⇒製造⇒販売」という過程で、原材料から製品を作って提供する産業の事を言います。
そして製造業の会社の中で、製造活動の全体を管理・統制する部署が生産管理となり、その仕事内容は多岐に渡ります。
一口に ”生産管理の仕事” と言っても、会社の業態によってその仕事内容や範囲は多少異なります。(例:企業規模の大小、製造品の違い、見込生産or受注生産、販売先が国内or海外)
ここでは一般的な生産管理の仕事として、以下の5つの項目を挙げ、簡単に説明して行きたいと思います。
- 需要予測
- 生産計画
- 資材管理
- 進捗管理・納期管理
- 製造原価の管理&原価資料作成
1.需要予測
生産を行う上で、その需要を予測せずには何の計画も立てる事はできません。
需要予測は生産計画の立案にも関わってくる欠かせないプロセスのひとつとなっています。
需要予測の算出には、過去の統計、各種分析、市場調査、最新の営業活動など様々なデータが用いられます。
2.生産計画
生産計画を立てる事は、生産管理にとっての根幹的な業務と言えます。
生産計画とは、「何を」「いつまでに」「どれくらい生産」するかの日程を立てる事であり、具体的には以下のような内容になります。
- 生産すべき製品の種類、数量、時期の決定
- 必要な原材料、部品の決定と資材調達部への指示
- 製造開始から出荷までの日程の決定
生産計画は単純に日程の計画を立てるだけではなく、細分化された業務や部門に考慮した精緻なものとなっています。
自社工場の生産能力、需要予測との連動、工程や工数の理解、資材の仕入先情報や購入時期、出荷と製造の同期化 etc. このように様々な要素を考慮して無理・無駄のない生産計画を立てる事が必要となります。
3.資材管理
資材管理とは、必要とする資材においての計画、購入、保管、消費、検査などの一連の管理の事を言います。
具体的には以下のような内容になります。
- 製品が完成するのに必要な材料や構成部品の割り出し
- 資材発注の内容(納期、仕入れ価格、数量)の決定
- 上記決定事項を資材調達の部署(資材部、購買部など)に指示
- 納品後の受入れ&検収
- 在庫品として倉庫に保管&入出庫の動きを管理
ちなみに大企業では資材調達を専門に行う部署(資材部、購買部など)が設けられているのが一般的ですが、中小企業では生産管理部がそれらの業務も兼任する事が多いようです。
4.進捗管理・納期管理
進捗管理とは日程計画の通りに現場の製造活動が進んでいるかどうかをチェックする事です。
そしてこの進捗管理が基本となって、製造業で何よりも大切な納期管理が行われています。
この進捗/納期管理は、工場全体の状況を可視化する事にも繋がり、作業効率の改善、遅延解消、問題発見&解決、作業員の調整など、全体的な生産性向上にも繋がってきます。
つまりは会社そのもののパフォーマンスに大きく関わっていると言っても過言ではないでしょう。
5.製造原価の管理&原価資料作成
製造原価とは、製品を作る際にかかったコストの合計金額を言います。
その中には原材料費、人件費、機械・設備費、水道光熱費、etc. など様々なものが含まれています。
これらをうまく管理し低減する事が出来れば、その分の利益を上げる事になります。
例えば、適切な生産スピードの維持や調整により無駄な時間・人員・在庫を抑える事、市場調査を行い原価変動のリスクに備える事など、そのようなマネジメントの手腕により製造原価は大きく変わってくるのです。
そして製造原価は決算書の数字にも関わってくるため、原価資料を作成して経理部に提出する事も生産管理の大切な仕事のひとつとなります。
どんな能力が必要となるのか
製造活動に付随する幅広い知識
前項で説明したように、生産管理の仕事は多岐に渡り、それぞれの分野における幅広い知識が必要となります。
製造活動は複数の専門部署がからむ連携プレーとなっています(営業部、設計部、資材部、製造部、品質管理部、出荷部 etc.)。
そして生産管理部は、滞りなく製造活動が行われるよう各部署に連絡や指示を出し、全体のバランスを取る司令塔のような役割もあります。
よってそれぞれの専門部署に関わる最低限の知識は必要となるのです。
例えば、マーケティング力、契約書の内容の理解、製品の設計や技術面、品質管理やそれに伴う法令、資材調達の経路、経理の一般的な知識、出荷から物流…等々をおおまかにでも理解しておく事で、製造活動全体をとらえる事が可能になります。
もちろん最初からこのような幅広い知識を持っている人はいませんし、新卒で生産管理に配属される事もありますので、OJTで仕事をしながら必要な内容をスキルアップして行くのが一般的です。
リーダーシップよりもコミュニケーション能力
”司令塔” と聞くと、リーダーシップが必要なのではないか?と思われるかもしれません。
しかし、生産管理に必要なのはリーダーシップと言うよりもどちらかと言うとコミュニケーション能力になります。
上の立場から統率・けん引するのでは無く、広い視野で全体を見渡し調整するために各部署に連絡・相談(指示)をすると言うようなイメージです。
各部署で何かが起きた際も、まずは生産管理に連絡し、現場状況の確認やその意見を聞くのが一般的です。
製造活動の全体を管理しているのは生産管理だからです。
そして部署間での中間役のような立ち位置でもあるため、時には部署同士の折衝を防ぐような役割を果たす事もあるでしょう。
司令塔であり中間役でもある生産管理は、製造活動の要であり潤滑油だとも言え、コミュニケーション能力はとても大切になってきます。
英語力
海外展開している企業の場合は、生産管理でも英語が必要となります。
契約書やプレゼン資料はもちろん英語ですし、客先担当者と直接電話やメールでやり取りをする事も日常です。
顧客とのやり取りは主に営業部が行うものだと思われがちですが、詳しい製造工程や生産スケジュール、技術面などは生産部門の人間でなくては説明できない事も多々あります。
最近ではどこの会社でもTV会議のシステムが普及しているため、海外顧客とTV電話で簡単に打合せ出来るようになりました。
そういった事情からも、営業部にかかわらず製造現場の要である生産管理部も直接顧客と対峙する機会が増えていると言えるでしょう。
ただ、最初からTOEICでの高得点や流暢なスピーキングが出来る必要はありません。
最低限の英語力は必要ですが、日常会話と違って専門用語や会話内容がある程度決まってくるので、仕事をしながら徐々に必要な英語力を上げて行く事は可能でしょう。
もちろん何となく仕事をしているだけでは英語力も向上しませんので、意識を持って学ぶ姿勢は必要です。
どんな人が向いているのか
人と関わり合うのが苦ではない人
生産管理は常に周囲と連絡を取り合い、情報共有をする事で製造活動を管理しています。
情報の出入りが日常茶飯事のため、人とのコミュニケーションが常に付いて回ります。
ちょっとした事でもぱっと担当部署に連絡・展開する事が、トラブル防止や効率化に繋がっている事も少なくありません。
普段から適切なコミュニケーションを取る事で、相手側も心理的に連絡しやすくなり、全体の連携が高まるというメリットもあるでしょう。
だからと言って、特別な陽気さや会話好きな性質が求められる訳ではありません。
きちんと連絡や情報共有ができ、相手に向き合う事ができる人であれば良いのです。
柔軟性があり多角的に物事をとらえられる人
生産管理の仕事は常に何かしらのトラブルに対応していると言っても過言ではありません。
納期変更、資材調達の遅れ、作業員の欠員、設計変更、機械の故障、輸入国での通関事情 etc. 様々の方面からトラブルが持ち込まれて来ます。
まずはその関連部署と共にきちんと状況確認を行い対処方を考える事になりますが、物事を点でとらえず様々な要素や可能性を鑑みて判断する事が大切です。
それは製造活動全体を把握している生産管理だからこそ出来る事であり、多角的に見た調整や柔軟な対応策が求められます。
向いていないタイプの人とは?
それでは逆に、生産管理に向いていないのはどのようなタイプの人なのでしょうか?
- 人と関わり合うのが好きでない、苦手
- 相手・他部署の立場に立って考えられない
- 自分の仕事にだけに没頭したい
生産管理という仕事は、司令塔でありながらもオールマイティさも必要です。
そして複数部署の連携から成る製造活動の中心という位置付けでもあります。
よって、人との交流を好まなかったり、ひとつの専門技術を突き詰めるようなタイプの人には向いていないかもしれません。
生産管理という仕事の魅力
幅広い知識が身に付く
生産管理の仕事はとても幅広い内容なため、様々な知識が身に付きます。
資材調達、製造、出荷、客先へ納入…と言うような一連のストーリーに携わっている事から、会社の事業そのものを肌で感じられる点も魅力だと思います。
他部署への異動や他の製造業の会社は転職するような場合でも、生産管理で培った経験や知識はその後のキャリアに有益となるでしょう。
面白くやりがいがある
生産管理は英語で言うとProduction controlになります。
その幅広い仕事内容から、製造活動の全体をコントロールしているという面白さが感じられると思います。
納期通りに製品を出荷できた、生産効率を上げ現場環境の改善や原価低減に繋げた等々、自分の成果が会社の利益に大きく関わって来るという点も、やりがいや達成感を感じやすい仕事だと言えるでしょう。
そして常に他部署と連携し関わりを持っているため、人脈を広げやすい部署でもあります。
まとめ
いかがだったでしょうか?
生産管理という仕事はとても奥の深い仕事ではないでしょうか。
色々とする事があって大変そうと感じた方もいれば、製造業の面白さを感じられると興味を持った方もいるかもしれません。
人にも物にもたくさんの関わりを持ち、様々な景色が見えるのが生産管理という仕事です。
営業部の競合に勝つための努力や契約内容交渉、製造部の現場作業での苦労、設計部の苦悩や製品トラブルの対応…そういった全てが見える位置にいるからこそ生産管理という仕事には拡がりがあるのではないでしょうか。
少しでもあなたのお役に立てる記事になっていれば幸いです。