「特別支援学校教員」の仕事内容を皆さんはご存知でしょうか?
「特別支援学校教員」という職業について、テレビや雑誌・ビジネスシーンなどで見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか。
「特別支援学校教員」の仕事内容や仕事のやりがい・つらいこと・向いてる人の特徴・なりかたなどを知っていないと転職活動ができません。
今回は、現役で「特別支援学校教員」として活躍されている方に、インタビューのうえ、実体験を踏まえて根掘り葉掘り聞いてみましたので、これから目指そうと考えている方の参考になることでしょう。
特別支援学校教員の仕事内容と給料
仕事内容
特別支援学校は、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱の5つの障害種によって学校が分かれています。
視覚障害だと盲学校、聴覚障害だとろう学校(聾学校)と表記する学校もあります。
障害のある子どもとかかわり、その子の将来像を見据えながら指導を行なっていくのが特別支援学校教員の仕事です。
1クラスあたり1〜6or8人の子どもが在籍しているので、一人一人との関係が密なものになります。
その分、責任も大きく感じます。
1日の流れについてです。
朝職場(学校)に着いたら、1日の流れを確認したり、授業の準備を行います。
子どもが登校したら、朝の準備を見守り、子どもによっては少し支援をしながらスムーズに一日を始められるようにします。
朝の会を済ませた後は授業に入ります。
学部(小中高)や障害種、子どもによって、授業の内容は大きく変わります。
小中学校では、教科書を使った教科の学習を行いますが、特別支援学校ではそうではありません。
中には教科書を使った学習をする子どももいます(盲学校、聾学校に多いです)。
しかし、知的障害の学校では「生活単元学習」など、一般の小中高等学校にはない授業があります。
子どもの成長に合わせて授業を考えていきます。
「自立活動」という授業もあります。
自立に向けて必要なことを教えていく授業ですが、なかなか難しいです。
その分、子どもにとっていい授業ができたときは嬉しいです。
帰りの会もすませ、子どもが下校したら会議が入ることが多いです。
学年の先生と行事について打ち合わせを行ったり、子どもの様子について情報交換を行なっています。
他には、校務分掌という学校運営についての業務もあります。
例えば、防災について避難訓練を計画・実施したり、生徒指導についていじめ防止の取り組みを推進したりといったことをします。
また、次の日に向けての準備を進めていると、あっという間に退勤時間となり、1日が終わります。
給料・収入
年収は300~500万円です。
特別支援学校教員の仕事のやりがい
障害がある子どもというと、できないことが多い子という印象をもたれるかもしれません。
確かに、同年齢の一般的な子どもより苦手とすることは多いです。
しかし、その苦手さに向き合い、じっくり関わっていく中でできるようになった時の喜びは大きいです。
また、どうしたらその子にとっていい方法になるかを考えるのも楽しいです。
例えば言葉がわからず、「おはよう」が言えない子がいたとします。
おはようを言うのはまだ難しいから、最初はハイタッチができればオッケーにしよう、その次は目と目を合わせてハイタッチができればオッケーにしよう…とスモールステップを考えていきます。
その子がどうしたら少しずつできるようになるのかを考えていきます。
小学校だと教科指導で「1ケタの足し算ができるようになる」という授業の目標があると思います。
そして、クラスの全員がその目標を達成できるようにすると思います。
しかし特別支援学校の授業の場合、全員が同じ目標を達成できるようにするのではなく、同じ授業の中で一人一人の目標が異なります。
例えば、「国語の物語を読もう」という授業があったとして、
自信がない時に小さい声になりがちなAさんは「大きな声で読むことができる」
人の気持ちをわかってあげることができるBさんは「登場人物の気持ちを込めながら読むことができる」
いつも元気でお話が大好きだけど早口なCさんは「早口にならないように、速さに意識しながら読むことができる」
というように、子どもの課題によって目標を設定しています。
つまり一人一人のことをよく考えた授業を行うことができます。
大変なことではありますが、こういう部分にやりがいを感じられます。
特別支援学校教員の仕事で辛いこと
特別支援学校は、一つのクラスに担任が2人入ることもあります。
ペアの先生とうまくいかないと一年間が地獄です。
子どもに理不尽に叱る先生も多いです。
(特に年配の方…)見ていて嫌になることもあります。
あとは、残業が多いこと、残業代が出ないことだと思います。
子どものことで大変だと感じることも多いですが、それを辛いとは思いません。
子どもが学校にいるのは8:30〜15:00、学年が上がると16:00、部活があると17:00まで学校に子どもがいることもあります。
子どもが帰った後は会議を行いますが、時間内に終わることはありません。
さらに自分の仕事(事務的なことであったり、授業の準備)をいつやればいいのか……時間が見つけられません。
そうなると、必然的に残業をする形になります。
一般企業に勤めた友人の話を聞くと、月30時間残業して5〜7万円もらえるそうですが、私たち教員は何ももらえません……。
教員特別手当というものはありますが、それは微々たるものです。
(5万円なんてとてもとても……という額です)
平均して月40時間ほど残業していますが、その分は何ももらえません。
特別支援学校教員へ向いている人の特徴3つ
- 子どもが好き!!
- まじめにコツコツ取り組めるが、割り切ることもできる
- 人とのコミュニケーションが得意
①子どもが好き!!
教員は、子どもありきの職業だからです。
子どもがいなかったら、特別支援学校をはじめ、学校を作ることはできません。
また、子どもが好きだとその子のために、いろいろ考えることができます。
今はまだ子どものその子が、大人になってより良い人生を送るために必要な力って何だろうか、そのために今必要な指導や支援は何だろうなと考えられることが大事だと思います。
特別支援が必要な子どもの中には、対応が難しい子どもも多いです。
もちろん他の先生に弱音を吐いたり、悩んだりすることもあります。
しかし、最後は子どものためにいろいろなことを考えてあげることができる、そんな人に教員を目指してほしいなと思います。
そのためにも、まずは子どもとたくさん関わってみてください。
いろいろな子どもと接してみると、また得られるものがあると思います。
②まじめにコツコツ取り組めるが、割り切ることもできる
教員は授業もあり事務的な仕事もあり…とにかく仕事の量が多いので、まじめに仕事に取り組むことができる人が必要です。
また、子どもの将来に良くも悪くも影響を与えてしまう、責任のある仕事でもあります。
しかし、常に全力でいるとこちらが疲れてしまいます。
また、全てのことを完璧にはできません。
完璧にやろうと思うと時間も圧倒的に足りなくなってきます。
ですので、「ここまでやれればいい!!」と割り切ることも大切かなと思います。
初任の時は、授業も何もかも完璧にしたくていろいろなことに手を出していました。
しかしそれが自分の首をしめることとなってしまい、適度に手を抜くところや割り切るところを探して妥協するようになりました。
そうすると、いろいろな仕事がバランスよく終わることができるようになりました。
その妥協点を見つけられることも大切だと思います。
③人とのコミュニケーションが得意
子どもとのコミュニケーションはもちろん重要です。
子どもの目線に合わせて、いろいろお話できると楽しいですね。
また、周囲の先生方とのコミュニケーション、保護者とのコミュニケーション、子どもが外部の支援機関(療育施設や病院)に通っていれば、その支援機関の方とのコミュニケーションも必要になってきます。
関わるだけでなく、合意のもと同じ方向を向いて、その子に関わっていく必要があります。
時には方向性が合わないときもあります。
しかし、自分の意見を押し通すのでは良くないですし、相手の意見を聞き入れるだけというのもよくありません。
互いの意見をうまく織り交ぜて、合意形成を行う必要があります。
うまく話そうとしなくても大丈夫です。
一方通行になるのではなく、相手の話を聞こう、自分の意見もうまく伝えようというコミュニケーション力が必要だと思います。
特別支援学校教員へ向いていない人の特徴3つ
- 臨機応変が苦手
- いろいろ気にしすぎてしまい、溜め込んでしまう
- 人と関わることや集団が苦手
①臨機応変が苦手
教員の仕事は、「単純作業」ではありません。
子どもの状態も毎日同じではありませんし、保護者の考え、他の教員の考えも様々です。
突然、予期しなかった何か(子どもの不調、トラブルなど)が起こることもあります。
つまり、臨機応変な対応が求められます。
工場などでの作業のように、一つのことに集中していればOKというものでもありません。
目の前のいろいろなこと(子どもが何をしているか、他の教員が何か困っていないかなど)に気を配りながら、頭の中でいろいろなこと(子どものことや授業のこと、事務仕事のことなど)を考えながら日々の授業や勤務をこなしていく必要があります。
また、昨日まではAの予定だったけど今朝出勤してみたらBという新たな予定になっていたということもあります。
なぜ!?と思う時も多々ありますが、受け入れて自分が順応していかなければなりません。
そのような意味では、臨機応変な対応にプラスして、柔軟に受け入れられる態度も必要かもしれませんね。
②いろいろ気にしすぎてしまい、溜め込んでしまう
教員は人の目が多い仕事です。
子どもにいろいろ言われることもありますし、周囲の教員にいろいろ言われることもあります。
指導方針が合わないともう悲しいことになります。
また、モンスターペアレントなんていう言葉もありますね。
保護者対応、とても難しいです。
細かいことを突っ込まれることもありますし、それは学校の仕事なのか?と思うことも多々あります。
あの保護者はいろいろ言ってくるなぁと思うこともありますが、それは逆に学校教育に期待してくれているのだなと思うようにしている部分もあります。
私もいろいろ気にしすぎてしまい、溜め込むところもあります。
ただ、それをどうするかが大事だと思います。
言われてそのままにするのではなく、自分で発散したり、そこからどうするかを考えられるかどうかだと思います。
自分で自分をコントロールできる人はそこから次に進めると思うのですが、なかなかそれが難しいと負のループに陥ってしまうかなと思います。
③人と関わることや集団が苦手
学校は人の目が多いところです。
小規模校なら教員も子どもの数も少ないですが、マンモス校ならうん百人の児童生徒数にうん百人の教員ということもザラです。
東京などの大都市に多い印象ですが。
特別支援学校は「チームティーチング」という言葉があるように、1人ではなく複数人の教員がチームとなって教育を行うところです。
一般の学校であれば、1つのクラスに1人の先生で授業を進めるところが多いと思いますが、特別支援学校では1つのクラスに何人もの先生が入ります。
肢体不自由の学校では1人の生徒に1人の先生がつくこともあります。
一般の学校よりも、同じ教員・同僚と接する機会というのはものすごく多いと思います。
また、授業のことなどで何度も何度も話し合いをしたりすることもあります。
人と関わることや集団が苦手となると、それはこの仕事をする上でとても不利だなぁと思います。
特別支援学校教員になるには?
特別支援学校教員免許+小学校or中学校、高等学校いずれかの免許が必要になります。
教員免許は大学で取得することができます。
正規の教諭として働くには、各自治体の教員採用試験に合格する必要があります。
詳細については、希望する自治体の教員採用試験について「〇〇県 教員採用試験」と検索してみてください。
講師であれば採用試験に合格する必要はありませんが、毎年働けるとは限りません。
(実際は、教員不足でそのようなことはありませんが)
難易度としては、さほど高くないように思います。
倍率については自治体によるところも大きいですが、小学校より高いです。
しかし中高よりはやや低いところが多い印象です。