介護・福祉

医療ソーシャルワーカーに向いてる人とは?【社会福祉士が解説】

医療ソーシャルワーカーに向いてる人

あなたは、メディカルソーシャルワーカー(※以下MSW)という職業をご存知でしょうか。そのニーズは増え続ける一方、いったいどのようなお仕事なのか、あまり知られていないのが現状です。

また『将来、視野に入れたいけれど、自分に合っているか心配』

このように思う方も、非常に多いです。そこで今回MSWのお仕事について、かみ砕きつつ、どのような人が向いているか、お伝えします。

なお、この記事を書く私はMSWではないのですが、社会福祉士として高齢者支援を行っています。しかしMSWとは仕事上の関りが深いので、客観的なリアル視点にて、お話することができると思います。

MSWのお仕事とは?

おもに大きな病院の職員として、所属しているケースが殆どです。ひとことで言い表すのであれば、患者に寄り添う相談係です。

その内容は、治療中だけに留まりません。入退院の前後から、転院の相談も行います。また病院と福祉制度を結びつける、掛け橋の存在でもあります。

たとえば、とつぜん救急車で運ばれた方が、無保険・身内無し・財産ナシ、といった場合・・この方の治療は、どうなるのでしょうか。医師や看護師だけでは、対応することができません。

そうした場合に、MSWは生活保護と結びつけることが出来ます。そして病院と患者の双方を、サポートすることが可能です。

このようにMSWは医療関係者であり、福祉職でもあります。医療の知識に加え福祉にも精通し、その両方を兼ね備えて、支援を行っていきます。

治療が終わったあとも

病院は通常、治療が終わったあとの暮らしまでは、面倒を見てくれません。しかし患者の生活は、そこからが本当の再スタートです。

以下は、本当にあった実例となります。私は高齢者の相談窓口ですが、あるときMSWから、これから退院予定の、高齢患者の相談連絡が入りました。そこで病院を訪問し、介護保険申請を行うとともに、リハビリの様子を見させて頂きました。

その後、こんどは患者の自宅を、MSWと一緒に訪問。必要な支援を、事前に打ち合わせました。

まず患者は歩行が、かなり不安定でした。病院の廊下も、手すりをつたっていました。その状態で帰った場合、風呂場や階段につかまる場所が無かったので、転倒して大けがのリスクが高いです。

そこで、手すり設置の住宅改修を行いました。また1人暮らしの方で料理や掃除など、すべて行うのは厳しい状況でした。そこで家事支援で、ホームヘルパーを手配。

事前に様々な準備をした上で、退院後のサポートを引き継ぎました。このように、MSWは様々な機関と連携し、必要な支援を行います。

マンガで分かるMSWのお仕事

MSWのお仕事は、文章で説明すると膨大で、1から掴むのはなかなか難しいです。
そこで、支援の雰囲気がよくわかる『相談室の星 医療ソーシャルワーカーの日誌より』というマンガが、おススメです。

この作品は『注射器もメスも使わず、患者の問題を解決!』というキャッチフレーズで、中央病院につとめる、女性MSWが主人公となっています。

※書籍情報 https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0253668

ものがたりを面白くするため、登場人物にキャラ付けなどはしていますが、私が読んでも思わずうなずいてしまう、現実に即した内容となっています。

MSWは、患者の人生に大きく関わるお仕事です。作中では治療を拒否する患者や、虐待の痕と思われる傷のある女児が、登場します。そんな時に、どう接すれば良いのか。こうしたストーリーも、決して大げさなフィクションではなく、実際にあり得る話です。

MSWは患者本人のみならず、家族や知人などからも、情報を聞いて支援の糸口を探します。また、自分だけでは行き詰ったとき、先輩に相談することもあります。そうした描写も、リアルに描かれており、MSWのお仕事が掴める、1冊となっています。

医療ソーシャルワーカーに向いている人とは?

ここまでの内容を踏まえ、MSWに向いている人の特徴を、以下3つほど挙げて行きたいと思います。

マルチタスクに仕事が出来る人

MSWはいろいろな支援を、同時に進めるお仕事です。ひとつの支援を考えている最中に、べつの相談が舞い込むケースもあります。さらには人の感情も状況も、刻々と変化して行きます。それらに混乱せず、同時並行で考えられる能力がある方が、良いと感じます。

深い意味で相手を理解できる人

患者には大きな傷病が有り、混乱や不安にとらわれている方も、少なくありません。ときに医師の言いつけを守らない、とつぜん退院を希望など、思いもよらない言動も有り得ます。

世間一般の価値観では『困った患者』『いい大人が』と見られることが多いでしょう。しかしMSWは、相談のプロフェッショナルです。

その方は何故、そうした言動をしたのか。背景にある状況や想いを汲み取りつつ、ときに患者自身も自覚しない本音を考えます。このように人間を表面でなく、深く理解するのが不可欠な職業であり、その追求を続けられる人こそ、向いていると感じます。

つねに試行錯誤できる人

支援に決まった正解はなく、病院のある地域、患者の性格や家族、病状などで1つ1つケースは違います。複雑で選択肢も多い中、固定観念にとらわれず、最善を模索して行くことが不可欠です。

また1人で考えては、行き詰まることも少なくありません。相談職は、1人で抱え込まないことも大切です。おなじMSW同士はもちろん、たとえ分野は違っても、関わる専門職は、ともに患者を支援する仲間です。

相談や話し合いを通じ、色々な意見も取り入れつつ、答えを探し求めて行ける人が、続けて行けるお仕事と言えます。

まとめ

以上、MSWのお仕事内容や、向いている方の特性を、お伝えしました。
大変なケースも少なくありませんが、やり甲斐の尽きない職業です。

そして患者と近い・・という地点を超えて、人生を左右する事もあるお仕事です。よく『本当に、あなたのお陰で』『ありがとうございました』と、心からの感謝を受ける機会があります。

そのため最終的には、得意分野や稼げるという理由よりも、仕事自体に惹かれて続けている人が多いです。

何より今の日本に、必要とされているMSW。この先もニーズは、ますます増えて行くでしょう。今ご覧のあなたも含め、1人でも目指す方が増えたら、嬉しく思います。

ここまでお読みいただき、有り難うございました。

ABOUT ME
原田 ゆきひろ
■歴史・文化ライター、取材ライター、社会福祉士。 ■東京都在住。高齢者の生活相談や、福祉の町づくりに携わる。 ■本業の傍らライター活動を行う。何ごとも自らとびこみ、表現する文章をモットーとしている。
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